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Vol.68 取引にみる利益確定と損切り

 今回は、前回考えた、期待値からみた有利性と実際の取引についてみていきたいと思います。

■なぜ、少しの利益を確定し、大きな損失を放置するのか

 前回考えてみた、2つの質問からいえることは、

 投資家には、

 利益を得る場面では不確実性が生じるリスクを嫌い、
 損失を被る場面では実損を避けたい気持ちからリスクを取りにいく

 傾向があるということです。

 この結果、

 運用を続けていくうえで、最も避けなければならないはずの
 少しの利益を確定して、大きな損失を放置すること

 を選択してしまうのです。

 では、どうしたらいいのでしょう?

 明らかに、資産がなかなか増えない原因が、少しの利益を確定して、大きな損失を放置してしまっていることにあると思い当たる方は、基本にたち返って、その銘柄を買う前にイメージした利益確定の水準と損切りの水準を、感情に流されることなく機械的に実行していく売買を一度取り入れてみるのはひとつの方法でしょう。

 ただ、人間にはこのような感情に流されてしまう傾向があることを踏まえながらも、損失が出ている現状に対して、個人だからこそ待てる時間を利用して、成長が期待できる厳選銘柄を持ち続ける手法もありだと思います。その場合の条件としては、かつて自分が投資を決めた価格よりも安い今の株価をみて「ナンピン買いしかない!」と思えるかどうかにあるでしょう。つまり、自分のポートフォリオに今は損失を与えている銘柄だけれど、それでもその銘柄を買いたいと思えるくらいの期待が持てるかどうかを冷静に考える必要があるわけです。利益確定も基本的には同じで、「この銘柄の実力はこの程度ではない!」と思っているのなら、たとえ、短期的な調整などで少し出ていた利益がなくなってしまっても、再び上昇してきたとき素早く買いにいける自信がないのなら、のちのちその銘柄が思ったとおりに評価されたとき悔やみきれないことになるので、振り回されない意思を持つ方が“賢明な選択”だといえます。

 そして、時折、運用する目的への進捗率を年単位などで考えてみます。そもそも、運用する目的を叶えるために、リスクをとって、時間を使って、自らの手で、運用していくのが個別株への投資ですから。

 短期売買向けの資金、中・長期投資向けの資金の配分やどちらかのスタンスへの集中など、相場環境を見極めながら、ブレない自分の手法を確立していく(努力をする)ことが大切ですね。

今回のポイント

1.投資家は、無意識のうちに感情に左右されていることが多いのが現実!
2.感情に流されず、ブレない自分の手法を確立していく(努力をする)ことが大切!


知っておきたい一冊
金融広告を読め どれが当たりで、どれがハズレか金融広告を読め どれが当たりで、どれがハズレか

作者: 吉本 佳生
出版社/メーカー:光文社
価格: ¥1,260 (税込)

少し前に発行されたものですが、今も氾濫する金融広告の“正しい解釈の仕方”がまとめられています。まともなリスク商品をみんなで支えていくためにも、正しい判断を周知させることは重要!事実を知らずに金融機関のテーブルにつく怖さとともに、金融商品は儲けがはっきりみえるめずらしい商品であることもわかります。投資経験ごとに楽しめる一冊。 

 野尻美江子

マネー
投資・運用生命保険自動車保険ローンクレジットカードキャッシングソニーグループ

 


2007-05-15 11:28  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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Vol.67 利益確定と損切りについて

 今回は、運用を続けていくうえでとても重要な、利益確定と損切りについてみていきたいと思います。

■最も避けなければいけなのは・・・

 運用を続けていくうえで、最も避けなければいけないのが、

少しの利益を確定して、大きな損失を放置すること

 です。
 
 これを繰り返してしまうと、資産はなかなか増えていきません。ただ、理屈ではわかってもなかなか実践できないのが人間というもの・・・のようです。

 早速ですが、次の2つの質問に素直に答えてみてください。
 
問1どちらを選択しますか?
1.70万円を必ずもらえる
2.100万円もらえる可能性はあるが15%の確率でゼロになってしまう

問2どちらを選択しますか?
1.70万円を必ず支払う必要がある
2.100万円を支払う可能性はあるが15%の確率でゼロにしてもらえる

 問1は1、問2は2を選んだ人が多いのではないでしょうか。確かに、問1の場合、道を歩いていて70万円をもらえたら間違いなく得ですよね。でも、そんなことは現実にはまずあり得ません。現実にこのような選択を迫られるのは、その人が何らかのリスクをとっていることが考えられるわけです。ただ、今回お話したいのはリスクのことではなく、確率からみた平均的に実現する数値として、どちらが有利になる可能性が高いのかという“期待値”からみた考え方です。よってこの選択にはリスクは考慮しないものとします。

  考えは少し変わりましたか?

  リスクを考慮せず、期待値からどちらが有利になる可能性が高いのかを考えると、問1は2、問2は1を選択するのが賢明ということになります。問1でみると、1の期待値は+70万円ですが、2の期待値は+85万円になります。同じように、問2をみると、1の期待値は-70万円ですが、2の期待値は-85万円になってしまうのです。

 終わり方がすっきりしないようで申し訳ないのですが、この考えと実際の取引については次回みていきたいと思います。

野尻美江子

マネー
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2007-05-08 11:50  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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Vol.66 株価急落時の銘柄入れ替えについて

 今回は、前回お話した、急落時は塩漬け銘柄を再生するチャンスということを踏まえ、急落時に銘柄入れ替えする際の注意点などについてみていきたいと思います。

■落ちているナイフは拾わない

 まず確認するべきことは、その急落がどのような要因によって起こったのかということです。'07年2月下旬から3月初旬に起こった「世界同時株安」の場合、上海発と報じられたものの、4月上旬の時点で、上海株式市場の総合指数は、すでに急落前の高値を10%以上も上回っています。むしろ、米国の行方を世界のマーケットは注目しています。日本株を手掛けているなら、急落に起因する世界の変動が日本のマーケットにどのような影響を与えるかをしっかり抑えておく必要があります。その結果、右肩上がりのトレンド自体に変わりはないと判断すれば、個別銘柄を物色することになります。

 日頃、値動きをチェックしていて、「一定水準を割ったら買いたい!」と思っている“リサーチ銘柄”をより丁寧に見ていき、必要以上に売り込まれている銘柄はないかをチェックします。ただし、銘柄によっては、自分がイメージしてきた一定水準という基準そのものが、急落時のシャッフルによって崩れていることもあるので、急落前までの常識だけで買いにいくのは時期尚早かもしれません。まさに、落ちているナイフを拾うことになってしまいます。

 また、需給を意識することも大切です。同じ値段で、買いたい人と売りたい人が存在して売買が成立していく株式市場においては、その銘柄をいくらで買っている人が多いのかということがのちのちとても重要になってきます。株価が、もう一段値下がりしたとき、多くの人が買っている株価水準がひとつの抵抗線になって上値を抑えることになりかねないからです。

 自立反発に加え、タイミングよく新製品開発などの好材料や上方修正も期待できるなか決算発表の日程が決定したり、レーティングの引き上げなどが発表されると、市場の関心がその銘柄に向きやすくなることもあります。急落前の株価水準にこだわることは判断を読み違える可能性があるので注意したいところですが、これまでその銘柄をリサーチしてきた努力は決して無駄にはなりません。例えば、第3四半期までの業績の進捗率をみて通期の上ブレが期待できるかどうか、信用の取り組みが改善されているかなどを手掛かりに、株価とともに、右肩上がりを崩していない市場においての“戻りの速さ”を考えてみます。

 もっと具体的に言えば、塩漬け銘柄の戻り方と検討している銘柄では、どちらが早く、その先も期待できるかということです。

 もちろん、銘柄ごとの上昇スピードを考慮して銘柄入れ替えを行う手法は、塩漬け銘柄にだけ使うものではありませんし、日頃から、急落時に備えた新規の買い付け資金があるなら、有望な保有銘柄はそっとしておくこともできます。

 とにかく、個別銘柄には、戻り方に違いがあるので、急落時こそ、銘柄入れ替えのチャンスにできる可能性が高いことを抑えておきましょう。

今回のポイント

1.急落時こそ、戻り方に違いがある個別銘柄の特徴を活かす!
2.急落時こそ、銘柄入れ替えのチャンスと捉える!


知っておきたい一冊
やさしい家計&勝ちにいく投資やさしい家計&勝ちにいく投資

作者: 荻原 博子 (監修), 植木 靖男 (監修), 深野 康彦 (監修)
出版社/メーカー:講談社
価格: ¥1,470 (税込)

家計・株式・外貨・投信を柱に、個人にとって、(挑戦するかは別としても)知っておきたいお金に強くなるヒントが、Q&A方式でコンパクトにまとめられています。お金に強くなりたい人に。

 野尻美江子

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2007-05-01 15:53  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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Vol.65 株価急落時の対処の仕方について

 今回は、急落時の対処についてみていきたいと思います。

■戻り方には違いがある

 ここ数年の市況動向や、海外も含めマーケットに影響を与えそうなイベントの日程などに注意していても、07年2月下旬から3月初旬に起こった、いわゆる「世界同時株安」のような局面を無傷で回避するのは難しいものです。それに、中・長期で取り組んでいる銘柄をいちいち売買する必要があるのかという見方もあるわけです。

 ただ、株価というものは、本来、その企業の本質的価値をもって評価されるはずですが、皆さんもよくご存知のように、株式市場が決める日々の株価には、上昇にも下落にも“行き過ぎ”が起こります。これが以前に触れた株式市場の歪みとなっているわけです。

 急落時には、結果として、そのような歪みが修正されたに過ぎない銘柄もあるでしょうし、必要以上に売られている銘柄もあるはずです。とにかく、市場が一度シャッフルされたような状況になりやすいので、チャンスが転がっている可能性が高く、保有銘柄の下落ばかりに気を取られているのはもったいない気がします。というのも、個別銘柄には、それぞれ銘柄の個性によって、その銘柄が落ち着く“上昇スピード”があります。たとえ急落時でも、いち早く下げ渋りをみせる銘柄もありますし、下げが下げを呼び、大底がつかみにくい銘柄もあります。一方、この違いは、保有銘柄の下げ方においても同じことが言えるわけです。

 もちろん、中・長期で取り組む銘柄であって、投資しているマーケットにとってみれば連鎖的な影響による一時的な急落と判断したのなら、そのまま何も動かさず、“行って来い”の株価変動をやり過ごすことも、資産を築く過程での重要なポイントだと思いますが、相場動向に合わせて、比較的短期で運用している銘柄や、図らずも保有している“塩漬け状態”の銘柄にとっては、動かす良い機会?!になることも少なくありません

 急落局面は、日頃、眼を背けてしまいがちな“塩漬け銘柄を再生するきっかけ”

と捉え、保有銘柄全体を、今後のマーケットを予想しながら、今一度、見直してみる機会と考えることも出来るはずです。次回は、銘柄を入れ替える際の注意点を見ていきたいと思います。

野尻美江子

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2007-04-24 15:43  nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
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Vol.64 あなたにとっての財産三分法とは?

 今回は、資金運用を取り巻く環境の変化を踏まえながら、あなたにとって最適な資産配分について考えていきたいと思います。

■変化から必要とされる現代版・財産三分法

 前回、資産運用のバランスは、杓子定規にだけ考える必要はないのでは・・というお話をしてきました。なぜ、杓子定規に行う必要がないのかといえば、資金運用を取り巻く環境が数年前と大きく異なっていること、そして、私たちが利用できる金融商品が多様化していることが挙げられると思います。

 まず、資金運用を取り巻く環境からみていきましょう。皆さんもご存じのように、日本銀行は昨年の7月、今年の2月と2回利上げを行いました。昨年3月の量的緩和を境に、日本銀行は金融政策をそれまでの緩和政策から、金利の引き締め政策へ180度転換したわけです。過去を検証すると、金利の引き締め(金利の上昇)は、短期間、長くとも2年弱程度で利上げを何回も行い、金利はピークを打つのが一般的でした。また、株式市場は当初2~3回までの金利引上げは、株価に大きな影響を与えることは少なく、利上げが4回目、5回目になると、利上げがボディーブローのように効いてきて、株価を下げる要因のひとつになってきたとみることができます。ところが、今回の利上げは過去の利上げペースに比べると非常に遅く、しかも次回の利上げは年内に1回あるかどうかというのが大方の予想で、実際、長期金利に至っては利上げにほとんど反応しないというありさまです。また、日本は利上げが始まったばかりですが、米国は17回、ユーロ圏も7回利上げ(平成19年3月現在)を行っているなか、それぞれの株式市場は過去最高値に近い水準にあり、過去の金利のピーク圏のような大きな調整はみられていません。また、世界的な金余りを背景に、長期金利は大きく上がっていない状況も見られ、実際に米国やユーロ圏では、株式市場から預貯金や債券などへの大きな資金シフトは今のところ起こっていないのです。

 また、金融商品だって、これまでみてきたように、投資信託を活用することで、BRICs諸国の株式や新興国の債券などに、小額から投資することが可能になっています。あるいは、先物やオプションを利用したり、FXや株式の信用取引などを活用することにより、リスク許容度によっては、少ない資金での効率的な運用も可能になっているのです。

 やはり、誰にとっても、旧来からの財産三分法が本当にいいのか?という疑問がわいてきます。確かに、財産三分法はバランスの良い資産配分ですが、海外の資産に投資することが難しかったり、機関投資家のような先物・オプションなどデリバティブを活用することができなかった、ある意味規制下において最適な資産配分だったと考えるべきでしょう。現代の私たちは、さまざまな投資手法を取ることが可能であり、資金運用を取り巻く環境も一層、グローバルに変化していることを認識する必要があるはずです。ということは、これまでとは違った財産三分法、いえいえ財産7分法とか、8分法………を考えなければならない、そうなると、時間的制約もあり専門家に任せる機会も増えるのかもしれません。  

 闇雲に複数の金融商品に分ければ良いということではなく、皆さんが自分のこと、金融商品のこと、資産運用を取り巻く環境の変化、そして何よりも、自分のイメージする市況環境の動向などを熟慮したうえで、現在の自分にとって、最適な資産配分を考えて頂きたいと思うのです。リスク管理はしっかり行いながら、必ずしも過去の常識に捉われず、運用に楽しみをプラスしながら、自分のお金と向き合うことを目指してみてはいかがでしょうか。

今回のポイント

1.現代版・財産三分法は、資金運用を取り巻く環境の変化から必要とされている!
2.現代版・財産三分法の確立には、市況環境を見極めが必要不可欠!


知っておきたい一冊
日本の選択日本の選択

作者: ビル・エモット, ピーター・タスカ
出版社/メーカー:講談社インターナショナル
価格: ¥1,680 (税込)

生きていくうえで“選択”は付きものですが、国にとってもその時々の“選択”はのちのち重要な意味を持ちます。国の価値を見極めることは、資金運用においても重要な要素です。そういった視点からオススメするこの本には、日本のグローバリゼーションの必要性とともに、日本には良くなる素質があることが示されています。日本のことを、今、真剣に考えたい人に。

 野尻美江子

マネー
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2007-04-17 16:33  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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Vol.63 現代版・財産三分法とは?

 今回は、資産価値の急落時に慌てないために、資産配分を見直す観点から、現代版・財産三分法を考えていきたいと思います。

■何らかのアレンジが必要な財産三分法

 昔からいわれている資産運用の考え方に、「財産三分法」があります。保有している資産を、預金、株式、不動産に分けて保有することにより、リスクを抑えながら収益の獲得を目指すというものです。なぜ、財産を複数の資産に分けて運用するのかと言えば、この世の中に万能な金融商品が存在いないからです。元本が保証されていて、いつでも出し入れ自由で、しかも高利回りという3拍子そろった金融商品があれば、誰もが運用に困ることはないわけです。しかし、世の中に数ある金融商品のどれもが、一長一短で複数の金融資産に分けて運用することで、バランスが取れるというわけです。

 ただし、この財産三分法は、本当に誰にも正しい運用方法なのでしょうか。

 教科書通りに考えるのなら、間違いではないでしょう。でも、年齢も、投資金額も、目指すゴールも違う、感情のある人間が、運用に求めるものはさまざまです。資産運用には、運用しやすい時期、いわゆるタイミングというものがあって、一生のうちそのタイミングは何回来るのかわかりません。有利に運用していくには、運用を取り巻く環境を考慮する必要だってあると思うのです。

 例えば、今が高金利局面だと仮定します。高金利局面では、預入期間の長い固定金利商品を利用するのがセオリーです。また、金利が高いときは企業の資金需要が後退していくため、成長が鈍る傾向があります。さらに、不動産価格だって高い金利を払ってお金を借り、新たな物件を取得・建設することが少なくなるはずです。とすれば、何も財産三分法のように預貯金、株式、不動産をバランスよく保有する必要はなくなるでしょう。高金利局面なら、あえてリスクを取らなくても預貯金や債券などの確定利付きの金融商品だけで、お金を増やすことができるわけです。このような、資金運用を取り巻く市況環境をしっかり把握できるのであれば、財産三分法ではなく財産2分法、極端な話、預貯金だけの財産一分法でもいいのかもしれません。一方、現在のような低金利局面では、預貯金だけではお金が増えないので、家計の状況によっては、株式などリスク商品のウエイトを高め、預貯金への資産配分を極力減らす配分もあるのでしょう。

 つまり、資産運用のバランスは、杓子定規に考える必要はなく、市況環境と、家計を考慮した、個々人の考え方によって配分を変えるアレンジが、以前にも増して必要な時代になっているのではないでしょうか。

 次回は、現代版・財産三分法を作り上げるうえでの資産運用を取り巻く環境の変化を中心にみていきたいと思います。

野尻美江子

マネー
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2007-04-10 17:18  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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Vol.62 ファンドマネージャーについて

 今回は、ファンドマネージャーについて、「プロとて歯がゆい部分もあるはず・・」という思いをこめて、私が思う個人的な考えを述べていきたいと思います。

■個別株に投資する個人投資家との違い

 私たち個人投資家は、自分のお金を、100%自分の考えを反映するかたちで、日々、運用することができます。そもそも余裕資金を投資しているので、そこには、特に制約があるわけではなく、相場の勢いが、新興銘柄から東証1部などの主力銘柄に移りそうだと思えば、資金をそのまま、主力銘柄に移すことも可能です。また、これまでにもお話してきたように、日本株で得た利益を使って、新興国の未来に投資することもできます。つまり、個人投資家は、常に、世界中のあらゆる市場や金融商品に対してボーダレスの投資機会を持っているわけです。

 しかし、ファンドはどうでしょう。例えば、“日本株グロース”を掲げるファンドの場合、当然、投資対象は日本株に限られますし、グロースファンドがバリュー寄りの銘柄ばかりを組み入れるわけにもいかないわけです。また、複数の投資対象に分散できるバランス型ファンドにも、各セクターの組み入れには上限が設けられており、投資対象のうち、あるセクターが有望だと思っても、100%資金をシフトすることは基本的に不可能です。このように、ファンドの舵をとる立場のファンドマネージャーには前提条件という名の制約があるわけです。

 考えてみれば、大勢の人を一定の方向に導くためには、それなりのルールやコンセプトが必要で、制約があるのも当然でしょう。大切なのは、ファンドを購入・保有するうえで、それらの制約を理解しているかということだと思います。ファンドは、いわば船のようなもので、ファンドが掲げる目標に共感・賛同した人だけが乗り込むものだと思うからです。市況環境が荒波に突き進もうとしているときには、維持することで精一杯かもしれません。だからこそ、我々投資家は、そのファンドが進む市場そのものが、マーケット全体を見渡したとき、“進みやすそうな状況なのか”ということを、少し考えてあげることが必要でしょう。ファンドには、それぞれが目標とするベンチマークがありますが、その目標を上回っていれば、その年、そのファンドは、たとえ基準価額を落としても、投資対象とする市場の中で、立派な成績をあげたことになります。もし、その結果に満足ができないと思うなら、つらそうな市況環境を予測した1年前の時点での解約が必要でしょう。ただ、中・長期で結果に繋げることを得意とする“ファンド”という金融商品の本当のチカラは、1年程度の減速で解約していては、長所を実感できる日はこないかもしれません・・・。

 但し、この考え方は、“信じられるファンド”を選んでいることが前提です。個別銘柄の選定も同じですが、信じるためには、ファンド(銘柄)の特性を知ることが必須です。残念ながら、日本の投信業界には、会社の系列によって強固な販売ルートが築かれていたり、人気化したファンドがあると、本来得意とはいえないセクターのはずなのに、無理して商品を作ってしまう悪い癖があるようです。なかには、そこは仕事ですから、心から担当したいセクター以外を担当するファンドマネージャーだっているかもしれません。

 過去の実績とともに、自由度の高い運用会社が設定したファンドで、ファンドマネージャーについても、実績とともに、プロフィールなどを参考に、「ご自身が担当したいセクターと現職が一致している」と思える方に託したいものです。ファンドマネージャーとて生身の人間ですから、コメントの端々や今後注目する着眼点などから、本音が覗えることがあるように思います。担当ファンドのコンセプトと素直に合致しているか、そのファンドに注ぐバイタリティーのようなものが感じられるかなどを鋭く読み取りましょう。その際、人間のぬくもりのようなものが感じられると最高だと思います。いつか、ファンドマネージャーに、「ありがとう!」といえるファンドはきっとあるはずです。

今回のポイント

1.プロに任せるファンドでも、乗り・降りは投資家が決めること!
2.いつか、ファンドマネージャーに、「ありがとう!」といえるファンドはきっとある!


知っておきたい一冊
サラリーマンは2度破産するサラリーマンは2度破産する

作者: 藤川 太
出版社/メーカー:朝日新聞社
価格: ¥756(税込)

家計の破綻を病気に例え、現状においては年収が高めの家計にも、病魔が潜むことを解説しています。タイトルこそ強烈ですが、人生のイベントを1つ1つ書き出すことで、将来、その家庭に掛かるはずの支出を年単位で把握していく「ライフプラン」「キャッシュフロー」の作成は、家計管理を行うための基本です。運用目的を再確認するのにオススメ。

 野尻美江子

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2007-04-03 12:42  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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Vol.61 投信・個別株にみる資産への道

 今回は、プロが選定するといった、一般的な投信と個別株との違いとは異なる角度から、投信の魅力について考えていきたいと思います。同時に、個別株における投資スタンスを再考するきっかけになれば幸いです。

■本格的な上昇を捉えるために

 “資産への道”としたように、将来、資産と呼べるリターンを享受することをめざす方法のひとつに、割安な水準で仕込んだ銘柄を持ち続けて大きな収益を得る方法があると思います。いわゆる長期投資のスタンスです。当然、結果が出るのが遅いため、マスコミなどがテーマとして取り上げるのも限定的で地味な存在だったわけですが、そろそろ、その実力の片鱗がみえてきたように思います。

 そこで、具体的な例として、2003年からの日本株の動向を振り返ってみましょう。一見、「株価が上がった」という過去の話を聞いてもうらやましいだけのことのように感じるかもしれませんが、過去の動きを検証することで、ここからの、“自分にとって後悔しない投資スタンスの確立”に向け、何らかのヒントが存在するかもしれないと思うのです。

■トヨタにみる投信と個別株の役割

 2003年の株価水準からみると、軒並み上昇しているので個別株の事例には事欠きませんが、例えば、『トヨタ自動車』の動きをみてみましょう。当時、代行返上の売りを浴びたことなどから、2003年4月につけた、2,455円を大底に、その後の安値は、2004年3,390円、2005年3,790円、2006年5,430円と着実に切り上げており、売上高2兆円突破などを背景とした株価の回復ぶりは周知のとおりです。時価総額トップで、手堅い銘柄と位置づけられることの多い『トヨタ』でも、わずか4年で株価は3倍以上(2007年3月現在)になっています。その間、さまざまなタイミングで『トヨタ』を保有していた人は多いと思います。

 でも、今でも持ち続けている人は、どの程度、残っているでしょうか?

 “割安な水準で仕込んだ銘柄を持ち続ける”ことが、感情を持つ人間にとって、いかに難しいことか、実感させられます。

 一方、日本株を投資対象とする投信では、『トヨタ自動車』を上位に組み入れるファンドを数多くみかけます。ためしに、運用状況が詳しくわかるレポートなどで、保有するファンド、あるいは、いくつかの気になるファンドの『トヨタ自動車』の平均買付コストをチャックしてみてください。きっと、うらやましい水準で保有しているファンドがみつかるはずです。『トヨタ自動車』という銘柄を個別株として買うことは誰にでもできる。そこをあえて、投信経由でも日本株市場に投資をしてきたからこそ、間接的に『トヨタ自動車』を持ち続けていることに似た成果がある。個別株に比べて、“売りにくい”特徴を持つ投信には、こんな魅力もあると思います。そして、ターゲットとする市場で右肩上がりが続けば続くほど、その成果はますます価値を持つことになるのです。

 次回は、ファンドマネージャーについて考えていきたいと思います。

野尻美江子

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2007-03-27 10:57  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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Vol.60 海外ETFは自分に必要ですか?

 前回、海外ETFの魅力についてみてきましたが、実際に今、ポートフォリオに組入れるべき商品なのか迷っている方も多いと思います。そこで、日本株を保有していることを前提とした、現実を考えながら、海外ETFを考えていきたいと思います。

■海外ETFに期待することは

 海外ETFの長所を活かすためには、その国の将来的な成長をじっくり捉えることが基本的なスタンスとなり、その結果、長期保有が前提になることが多いと思います。

 実際に、海外ETFを組み入れるかどうかは、ポートフォリオ全体のバランスとともに、海外ETFに向けられる性質の資金があるかどうかを検討することになります。海外ETFにもさまざまな指数に連動することをめざすタイプがあるので、一概にリスクが高いとは言えませんが、現在保有する他の金融商品との分散投資効果を期待して、リスクヘッジの意味合いを重視するなら、VOL28でご紹介したタダ株の発想で、運用益を向けるという発想をオススメしたいと思います。

■海外ETFと自分

 スタンスに合う海外ETFをみつけたら、購入に必要な合計金額を計算し、その金額を目標に運用してみるのです。時間が掛かり、もしかしたら買えない事態もあるわけですが、その時間を利用して、これまでは、日本株に影響を及ぼす“外部要因”程度にしかみていなかったマーケットの動向をじっくり調べてみましょう。個別銘柄の選定が不要なETFとて、その銘柄が連動することをめざす市場の動向は、しっかり把握しておかなければなりません。そのような準備をしておいて、“買い時”を待ちます。買い時とは、日本株ETFと同様に、やはり大幅安を記録した日などをきっかけに、打診買いをしながら、買い進むことが、結果として、底堅いETFにつながると思います。

 目先の行動としては、自分にとって使いやすい、リアルタイムで動向がわかるサイトをみつけて、値動きをこまめに確認することを習慣付ける必要があります。

 今、「面倒くさい・・」と思った方もいるでしょう。それでもいいと思います。“どこまでを、自らの投資対象にしていくか”は、ひとりひとり違いますし、目指しているゴールも違います。海外ETFを購入しても、「1銘柄増えただけ」と気軽に考えられる方もいますが、リサーチしていけるかどうか心配で自信がない方は、そこまで手を広げる必要はないと思います。日常生活の中で習慣として、海外ETFをウオッチしていくことが可能かどうか、冷静に考えてみてください。その結果、とりあえずは、商品性を知ることで留めて、今後手軽に買えるラインナップが増えてきてから真剣に考えるという結論でも良いのかもしれません。

今回のポイント

1.海外ETFの商品性は、海外株式への投資にあたり、理に適っている!
2.海外ETFのリサーチを、“習慣”にできるか考えてみる!


知っておきたい一冊
会社四季報 2007年 2集春号 [雑誌]会社四季報 2007年 2集春号

出版社/メーカー:東洋経済新報社
価格: ¥1,750 (税込)

改めて、ご紹介するまでもないかもしれませんが、やはり「会社 四季報」は投資家にとっての必須アイテム。有望銘柄を発掘すべく、幅広く、会社の中身をざっくり把握したいとき最適な情報ツールです。特に、会社発表と異なることも多い、四季報独自の業績予想のチェックは欠かせません。ちなみに、「会社 四季報」が誕生したのは、あの2・26事件が起きた1935年のこと、歴史を感じます。すべての投資家に・・・。

 野尻美江子

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2007-03-20 17:45  nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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Vol.59 海外ETFの魅力について

 今回は、コストが安く、流動性にも優れている、海外ETFについてみていきたいと思います。

■海外ETFの魅力とは

 そもそも“ETF”という金融商品の最大の魅力は、VOL.30などでもみてきたように、“銘柄選定の時間をかけずに市場平均を買える”ところにあります。これまでお話してきたETFは、日経平均株価やTOPIXなどに連動する東証あるいは大証に上場する日本株ETFをイメージしてきたわけですが、海外ETFにおいても、国内証券で取引する場合、信用取引が原則不可など、日本株ETFとの違いはあるものの、“市場平均を買う”ということに変わりありません。

“市場平均を買う”ことは、日本株ETFでも手間がかからないという大きなメリットがあるわけですが、ある特定の企業を選定し、その企業をずっとリサーチしていくことが日本株以上に難しい海外株式の場合、その効果は一層高まるといえるでしょう。

 例えば、ダウ工業株30種平均株価やナスダック100に連動するタイプの海外ETFなら、日本のニュースでも伝えられる身近な情報源がありつつ、通常(市場に上場されていない)の投資信託に比べて信託報酬が安いので、手数料を抑えつつ、機動的に、米国株への投資が可能になるわけです。

 つまり、商品性からみて、海外株式への投資にETFを活用することは、理に適っているのです!

■海外ETFはどこで買えるの?

 最も便利なのは、やはり国内の、それも現在自分がメインに取引している証券会社で購入できることだと思います。ただ、残念ながらすべての証券会社で購入できるわけではなく、今のところ海外ETFを取引できる国内証券は、野村證券大和証券日興コーディアル証券楽天証券ユナイテッドワールド証券などとなっています。店頭取引のみですが、最も取り扱い銘柄が多いのは野村證券で13銘柄(07年2月現在)を取り扱っています。手軽さをモットーにETFに注目したのなら、国内証券で購入できるETFの中で、スタンスに合うものを、取引形態や外国証券口座に掛かる管理手数料などを含めたトータルコストを踏まえて検討してみることになるでしょう。 

 一方、国内証券で取り扱いのない銘柄を取引する場合には、海外の証券会社に口座を開くことが必要になってきます。現状における海外ETFには、日本株ETFに比べ、取引に難があるのは事実ですが、そんななか朗報もあります。大証(大阪証券取引所)は、07年1月のプレスリリースで、07年3月に、中国やインド等の外国株価指数連動タイプと金価格や金利等の指標に連動するタイプのETFの上場を予定していることを発表しており、海外の流れ同様に、日本でもETFのグローバル化が期待されるところです。次回は、海外ETFは今の自分に必要かという視点で考えていきたいと思います。

野尻美江子

マネー
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2007-03-13 11:18  nice!(1)  コメント(1)  トラックバック(1) 
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