Vol.63 現代版・財産三分法とは?
今回は、資産価値の急落時に慌てないために、資産配分を見直す観点から、現代版・財産三分法を考えていきたいと思います。
昔からいわれている資産運用の考え方に、「財産三分法」があります。保有している資産を、預金、株式、不動産に分けて保有することにより、リスクを抑えながら収益の獲得を目指すというものです。なぜ、財産を複数の資産に分けて運用するのかと言えば、この世の中に万能な金融商品が存在いないからです。元本が保証されていて、いつでも出し入れ自由で、しかも高利回りという3拍子そろった金融商品があれば、誰もが運用に困ることはないわけです。しかし、世の中に数ある金融商品のどれもが、一長一短で複数の金融資産に分けて運用することで、バランスが取れるというわけです。
ただし、この財産三分法は、本当に誰にも正しい運用方法なのでしょうか。
教科書通りに考えるのなら、間違いではないでしょう。でも、年齢も、投資金額も、目指すゴールも違う、感情のある人間が、運用に求めるものはさまざまです。資産運用には、運用しやすい時期、いわゆるタイミングというものがあって、一生のうちそのタイミングは何回来るのかわかりません。有利に運用していくには、運用を取り巻く環境を考慮する必要だってあると思うのです。
例えば、今が高金利局面だと仮定します。高金利局面では、預入期間の長い固定金利商品を利用するのがセオリーです。また、金利が高いときは企業の資金需要が後退していくため、成長が鈍る傾向があります。さらに、不動産価格だって高い金利を払ってお金を借り、新たな物件を取得・建設することが少なくなるはずです。とすれば、何も財産三分法のように預貯金、株式、不動産をバランスよく保有する必要はなくなるでしょう。高金利局面なら、あえてリスクを取らなくても預貯金や債券などの確定利付きの金融商品だけで、お金を増やすことができるわけです。このような、資金運用を取り巻く市況環境をしっかり把握できるのであれば、財産三分法ではなく財産2分法、極端な話、預貯金だけの財産一分法でもいいのかもしれません。一方、現在のような低金利局面では、預貯金だけではお金が増えないので、家計の状況によっては、株式などリスク商品のウエイトを高め、預貯金への資産配分を極力減らす配分もあるのでしょう。
つまり、資産運用のバランスは、杓子定規に考える必要はなく、市況環境と、家計を考慮した、個々人の考え方によって配分を変えるアレンジが、以前にも増して必要な時代になっているのではないでしょうか。
次回は、現代版・財産三分法を作り上げるうえでの資産運用を取り巻く環境の変化を中心にみていきたいと思います。
野尻美江子
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