Vol.78 株式投資における失敗とは?
VOL.77でみてきたように、私は、1つ1つの投資で、思い悩んだり、猛烈に反省したりするその1つ1つが、『一生使える投資スキル』を磨いているのだと思っています。
つまり、株式投資には、悩んだり、迷ったり、反省したりという、心理的にはツライ出来事が多々あるわけです。では、それらはすべて失敗なのでしょうか?
今回は、株式投資における失敗について考えていきたいと思います。
投資以外の日常的な出来事でも、人の価値観や受取り方はさまざまです。運用も同様で同じ銘柄に投資していても、その後の相場展開に対する受取り方はさまざまです。ある人は、購入直後から株価が動くことを期待するかもしれないし、ある人はその株価水準で購入できたことで満足しているかもしれません。当然、その後の投資判断はまったく違ってきます。
もちろん、現物株の売買であれば、買いを入れた誰もが、その銘柄が上昇していくことを期待しているのは確かです。でも、一本調子で上昇していくことはまずない株式市場において、その後の株価動向の受取り方やその銘柄の役目を見切るタイミング(売り時)は銘柄の成長性に関わらず、投資する人たちの間にある、“期待するものの違い”によって、さまざまになるわけです。
株式市場には、時として、ある企業に対するTOBが発表され、その価格が時価よりも高い水準である場合のように、多くの人が目指す水準がわかりやすいケースも存在します。でも、それでも皆が同じ判断をするとは限りません。TOB価格で買い取ってもらおうと考える人もいるでしょうし、日数が掛かり面倒だから、多少ならTOB価格以下でも市場で売却しようと考える人もいるでしょう。あるいは、TOB価格よりもオーバーシュートするタイミングを期待したり、TOB価格が引き上げられる可能性に期待する人だっているかもしれません。このように、同じ銘柄に対して、一定の目標が提示されていても、投資家の判断はさまざまです。
投資判断には、性格や投資期間、期待リターンなど、投資家の事情が少なからず反映されることになります。株式投資の基本は、自身の都合ではなく、相場の都合に合わせてあげることだけれど、長く続けていく中では、資金効率を高めるためやポートフォリオの見直しなど、その後の市場動向を反映させていくことは重要です。だから、今後もほぼ予想していた範囲では上昇が期待できる銘柄であっても、銘柄研究の結果、ずば抜けた成長が期待できる新たな銘柄が見つかった場合には、利益確定、あるいは損切りをしてでも、乗り換えていいと思います。
このときの損切りはやはり失敗なのでしょうか。
私は、資金効率を高めるための積極的な挑戦だと思います。損切りした金額は、また1つスキルUPさせてくれた授業料くらいに考えると気持ちもスッキリします。市場に振り回されるのはいけないけれど、集中投資したいほど有望だと思える銘柄を見つけたときは挑戦する気持ちも大切なのです。次回も、株式投資で失敗と受取られることについてみていきたいと思います。
作者: 橘 玲
出版社/メーカー:文藝春秋
価格: ¥ 788(税込)
この本には、株式市場の現実が、さまざまな実例に沿って、正確かつ痛烈に表現されています。決して、そこらにある、”株の入門書”ではありません。このブログのテーマでもある、「仕事と運用のバランスが人生でいかに大切か」、「手間の掛からない運用の重要性」が、論理的に説明されています。株式市場に参加する(したい)すべての人にオススメ。
野尻美江子
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